総合プロデューサー・音楽監督の松下耕によるコラム『その5』をご紹介させていただきます。ご覧ください。
このコンクールは、国際審査員が7名審査にあたります。7名中、5名が外国人です。すべての審査員は、国際的に活躍する指揮者、または作曲家であり、現在考えられる最高のメンバーと言えると思います。メンバーは、ヨーロッパから2名、アジアから2名、アメリカから1名、そして日本から2名お招きしました。この布陣は、様々な観点からとても重要な意味を持つものです。
様々な地域から招かれた審査員は、それぞれの見方、それぞれのポリシー、それぞれの美的観点を持っています。多様な価値観により評価された結果は、日本人、日本の合唱界にとって新鮮な驚きとなって伝わるかもしれません。また、世界各国の一流の指導者に、日本の合唱の現状を知ってもらう、という観点からも、審査員は出来るだけ多くの国や地域からお招きすることが必要と考えます。彼らにとっても、日本の合唱の素晴らしさは、記憶に残る鮮明な感動として伝わることでしょう。
なお、出演した合唱団は、審査員のコメントももらえます。結果だけでなく、世界の名だたる音楽家が、皆さんの演奏をどう評価したのか、文章で手に入れることが出来るのです。これは、日本の合唱団にとって大きな魅力なのではないでしょうか。
来年、第1回の東京国際合唱コンクールにやってくる審査員の横顔をご紹介しましょう。
・ハビエル・ブスト氏(スペイン・バスク地方)作曲家
合唱ファンなら言わずと知れた、現代を代表する作曲家です。彼に審査してもらえることを夢に見る方々も多いのでは。合唱が特に盛んなバスク地方から、はるばるやってきてくれます。
・ゲオルク・グリュン氏(ドイツ)合唱指揮者
ザールブリュッケン室内合唱団の指揮者。7月、スペインのバルセロナで開催された、世界合唱シンポジウムの大トリを務めた合唱団です。世界中を感動の渦に巻き込んだ、超一流の指揮者です。
・アントン・アームストロング氏(アメリカ)指揮者
ミネソタ州にある、聖オラフカレッジの指揮者。3月にミネアポリスで行われた、全米合唱指揮者協会のカンファレンスのメインゲストとして演奏、数千人を感動の涙で満たしました。祈りとは何か、という観点から審査してくれることでしょう。
・ジョン・オーガスト・パミントゥアン氏(フィリピン)作曲家
我が国でもおなじみの、作曲家のスーパースター。親日家でもあられ、彼の来日回数は相当の数にのぼります。日本の合唱界に理解の深い彼が、どのような審査をしてくれるのか楽しみです。
・ネルソン・クウェイ氏(シンガポール)合唱指揮者
シンガポールの大スター。世界のコンクールで賞を総なめにしている、スーパー指揮者です。彼は特に、学生や若い人たちの合唱に精通していますから、児童合唱、ユース合唱の団体にとって、とても貴重なアドバイスがもらえるものと思います。楽しみですね。
・新実徳英氏(日本)作曲家
日本の現代音楽界を常にリードしてきた大作曲家が、このコンクールの審査を担当してくださいます。学生時代から合唱にのめり込んで来た、という新実さん。合唱分野には、とりわけ深い愛情を注いでくださっています。
・千原英喜氏(日本)作曲家
もう一人の日本人の審査員は、大人気の千原英喜さんです。千原さんは常に、日本とヨーロッパの文化の接点を見据えた活動をしてこられました。その意味でも、このコンクールの審査員にふさわしいビッグネームです。
優劣をつけるだけのコンクールではなく、文化のダイバーシティを認め合い、確かめ合うコンクール、それが東京国際合唱コンクールです。
音楽監督・総合プロデューサー 松下 耕